我が家もファシズム?

2012年1月24日

さっぱり理解できない

しばらくの期間、テレビも見ず友人とも会わなかった。それで浦島太郎になったようだ。

年末に久々に会った友人がひどく呆れていた。大阪市長選で反橋下陣営だった市幹部が、もし橋下市政となったら辞職すると大見得を切っていたという。なのに、いつの間にか撤回してしまったのだ、と。

それから数週間たった今も、メディアは橋下大阪市長の話題でにぎわっている。ネットを多少見て回ったけれど、ぼくは橋下市長を批判している人々が何を言いたいのか、印象論以上のものを未だに理解できないでいる。

たとえばとある教育関係者。橋下市長は強権的だから駄目だという。挙句はファシズムだとか、ハシズムなどと揶揄している。たしかに呆れてしまう。

なぜなら、教育関係者たちも学生や子ども相手にさんざん専制を敷いているではないか。校則から成績評価、進学から就職支援に至るまで、巧妙な手段で圧力をかけ、うまく操っている。

橋下氏の言葉尻をとらえて人徳がないと言うが、では自分の人徳だけで生徒が始業時間に教室に集まり、成績が上がるという超人的な教師がこの世の中にいったい何人いるだろう?

それは親も例外ではない。うちには三歳の子供がいて、やんちゃ盛りだ。食事中に立ち上がってふらふらするし、最終決戦だとか言っておもちゃを散らかすだけ散らかして片付けないし、夜でもドタバタと走る。注意しても馬耳東風。ほんとうはあまりきつく言わずに伸び伸びとさせたいようなことも、やはり制約もあってやむを得ない。ときには怒鳴り、なだめすかし、我に返ってその低俗さに呆れ果てることがある。たった三歳の小童相手に、誕生日プレゼントという袖の下で言うことを聞かせ、実在しないモンスターをでっちあげて脅すザマだ。

「お父さんが小さいころ、イタズラばっかりしてたら恐いカミナリさんが来てな、おじいちゃんとおばあちゃんが連れて行かないでって泣いて頼んだけど、空の雲のうえに連れていかれたんや。夜、カミナリさんの子どもとカミナリご飯食べて、一緒に寝て、やっと帰してもらったんやで。真っ黒な雲のおうちに連れていかれてええんかぁ?」

不思議なことに、実在するぼくが怒鳴り散らすより、そうした虚構のほうがよく効いたりする。酷いやり方だなと省みつつ、なんとか毎日を送っている。

学校にもそうした諸々を必要と認めて親は委任しているわけで、それは橋下さんに対して期待することと変わらない。

ところが、現状に固執する人々はファシズムと呼ばれず、現状を変えようとするとファシズム呼ばわりされる。現状維持派は、現状改革派を同じようにこれまで押さえつけてきたことには気づかない。

人の上に立つ難しさ

中学の学級会でさえ、違う意見をまとめるのは大変だ。一クラスの人数が30人だとして、大阪市の推計人口は267万人。8万倍以上。当然、利害は入り乱れ、対立的な意見のなかで絶対的な正解など見つかるはずもない。そうならば、種々の制約のなかで誰かが決断して進めていかざるを得ない。
橋下氏は、リーダーの当然の役割を果たしているだけだ。

日産自動車にゴーンさんが来たときはワンマンだとか非情だとかは言われたが、ファシズムだとは誰も言わなかった。(当時の日産はちょっと大阪と似ているかもしれない。日本で第2位の自動車会社だったが、労働組合や関係会社のしがらみを断ちきれないまま、約2兆円の負債でつぶれかけていた…。大阪市の負債は5兆円以上)

そして、リーダーの役割には当然責が伴う。失敗すれば橋下さんは失職。親だって、自分の教育が子供の一生を左右する。だから必死になっている。
他方、橋下氏への反発を表明した市職員は、いったい何を賭していたのか? それが見えなければ、市民のためではなく自分たちのためだけに抗っている印象が強まるばかりだ。ぼくの友人はそれに腹を立てていたのだ。

チャンス到来

こんな物言いは、良心を尽くして仕事している大勢の職員の方々には失礼だとわかっている。自分だって、人にあれこれ言えた柄ではない。

それでも、これまで密室の不合理な意思決定に翻弄されてきたデキる職員にとっては、能力を活かすまたとないチャンスだ。
さらに、税金の無駄遣いなどと橋下さんにこき下ろされた大学関係者にとっても、世間の注目が集まる今が逆襲のチャンスだ。ぼくは、誰がなんと言おうと、正しい学問には価値があると思う。だからこそ学問する人はその成果をアウトプットして世間に役立てるべきだし、役立つと証明する義務と責任があるとも思う。ただし、橋下市長の態度がどうこうという反論なら聞きたくない。

橋下市長への賛否などもはやナンセンスだし、どっちが悪いとかでもなく、必要なのは具体的な政策論議だ。

だから大学の先生には提案したい。まず、頭のなかをわかりやすくオープンにしてほしい。つまり、プレゼンの方法を考えた方がいい。そのために、問題意識なり課題設定なりをレベルごとに構造化したチャートにでもした方がいい。その方が、理解力の乏しいぼくのような人間を味方につけるツールとなりやすいのでは?

敢えて言おう、世論が橋下市長側に傾いているからこそ、対抗陣営を応援すると。
彼らがちゃんとがんばれば、橋下さんはもっと燃えてくれるだろう。
それはスポーツのいい試合に似ている。

「税金の無駄遣い? あほなことぬかすな」と堂々と渡り合ってほしい。

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