ツイッターで『「昔の子どもはかわいそう」と思うとき』という画像が流れてきた。小学5年から中学3年までの男女200人を対象にしたアンケートのようだ。
●子どもニュース
「昔の子どもはかわいそう」と思うとき
1.土曜日にも学校の授業があった 118人
2.インターネットがなかった 88人
3.面白いゲーム機がなかった 71人
4.携帯電話がなかった 68人
5.エアコンがなかった 59人
6.テレビが小さくて白黒だった 53人
7.コンビニエンスストアがなかった 51人
8.学校の給食がおいしくなかった 45人
9.家の手伝いをしなければならなかった 42人
10.テレビが家に1台しかなかった 41人
小学5年から中学3年までの男女200人が対象
これを見た大人(たぶん)の反応が興味深かった。
「こんなことでかわいそうと思う今の子供が逆にかわいそう」
「そんなものなくてもぜんぜん悲しくなかった」
「むしろ楽しかったし自由だったし未来があった」など。
まあ、それが大方の大人の自然な反応だろうと思う。つまり、今の子供たちは携帯やエアコンやコンビニやネットのなかった昔はかわいそうと思っているかもしれないが、そんなものなくとも問題なんてなかった、と。
けれど考えてみると相当矛盾している。ゲーム機もコンビニも携帯電話もエアコンも、作ってきたのは大人たち。それなのに、大人たちの反応からすると、なくてもよかったものをこれまで作りまくり使ってきたということだろうか。これはいい!マストバイ!と宣伝し、子供たちに、それらがなかった昔はかわいそうと思わせている。ところが、それを見たわれわれがまた、そんな子供はかわいそうだとコメントする……っておかしくないか?
いや気持ちはわかるんです。
ぼくもアジアを旅したとき、自分の国がたどってきた道がはたして幸福な道だったんだろうかと疑問に思うことがあった。日本の数十年前の姿を彷彿とさせる国に滞在していて、不便ながら正直とても心地よかったのだ。さらに、発展途上国が経済発展に邁進するあまり環境がえらい勢いで破壊されていく光景にぞっとしたこともある。
少し次元が違うけれど、歴史番組を見て次のように感じることは誰しもあるだろう。あの時代はたいへんだったんだな、今の時代に生まれてよかったなぁ、と。江戸時代の家屋にはガラス窓もエアコンもないし冬とか寒かったんだろなぁと思ったりする。車もなく長距離の移動もしんどかっただろうなぁ。今だったら簡単な手術や薬で済む怪我や病気であっけなく命を落としたりしたんだ……などなど。たいていの人は、そうした時代より今の時代の方が幸福だと思っているのではないだろうか。今の子供たちが、昔の子供たちはかわいそうと思うように。
でも、もし上記のアンケートに反応した大人たちのような存在がさらに上の年代にいたらどうだろう。人間の平均寿命は450年で(仮にの話ですよ)、安土桃山時代に生まれた長老にぼくたちが言う。
「桃山時代は温水洗浄便座がなかったから痔の人たいへんでしたね。便所は冬寒かっただろうし、かわいそう」
そうすると御年480歳の長老が返すのだ。
「たわけ、わしらAMG(安土桃山世代)はそんなにヤワやないで!逆にそういうふうにしか見られへんおまえらの方がかわいそうや!」
あるいは、西暦2112年に母猿が仔猿に言う(猿の惑星になっている)。
「そんなに言うこと聞かないんだったらロケットで2012年の世界に送り返すよ!」
「いいもん!」
「100年前がどれだけ不便でかわいそうな世界だったか知ってるの? 人間が檻の外で生きてるのよ!」
「……(こわい)!」
その映画を観ながら現代(2012年)のぼくらは心の中で言うだろう。
「いやいや、何もそんなにかわいそうじゃないっす。不幸なこともあるけれど、幸せなこともあるし」
人は、その時代その時代をせいいっぱい生きている。
でも、自分たちでこういう社会を作っておいて、そこに価値を見出している子供たちのことを不幸だという大人たちって、ちょっと梯子はずしすぎやしないかと思う。
(注:画像のソースを調べてみたんだけどわからなかった。もともとの発信源らしき方に質問するのも何か手を煩わせそうなので省略。本来ならアンケートの時期や調査方法まで確認するのが筋だろうけど、これを見た人たちの反応自体が面白かったので書いてみた。ソースをご存知の方、教えて頂ければ幸いです。)